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最高裁判所第三小法廷 昭和49年(オ)577号 判決

主文

理由

上告代理人上田稔及び上告人の各上告理由について。

所論の点に関する原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

しかしながら、職権をもつて調査するに、原審が適法に確定した事実によれば、被上告人は、昭和四二年六月一〇日上告人に対し金一四万五〇〇〇円を利息日歩二七銭、弁済期同年九月一〇日と定めて貸付け、その際弁済期までの利息として金三万一三八〇円を天引し、その後上告人は被上告人に対し、右借入金の弁済として原判決添付別表第二記載1ないし25及びアないしオのとおりの金員を支払つたというのであり、遅延損害金に関する特約の存在についてはなんら認定がされていないのである。利息制限法所定の制限をこえる利息の定のある金銭消費貸借において遅延損害金について特約の認められない場合には、遅延損害金は、同法一条一項所定の利率にまで減縮される利息と同率に減縮されると解すべきであるから(最高裁昭和四〇年(オ)第九五九号同四三年七月一七日大法廷判決・民集二二巻七号一五〇五頁参照)、本件金銭消費貸借契約の遅延損害金の利率は、同法一条一項により減縮された約定利息の利率と同一の年一割八分に引き直されるべきものである。そこで、被上告人の天引利息のうち年一割八分の割合による制限利息をこえる部分を元本の支払に充てたものとみなすと、元本の残額は金一一万八七七四円となり、また、上告人の弁済金をその支払の都度残存元本に対する年一割八分の割合による遅延損害金に充当し、超過部分については、民法四九一条により当然残存元本に充当すべきものとすると、最終の弁済の日である昭和四四年三月一九日現在の元本残額は金七万一五四五円となることが計数上明らかである。したがつて、原審は、上告人に対し、金七万一五四五円及びこれに対する昭和四四年三月二〇日以降右完済に至るまで年一割八分の割合による金員の支払を命ずべきものであつたのである。それゆえ、右と異なる判断をした原判決には、金銭を目的とする債務の不履行についての損害賠償の額に関する法の適用を誤り、かつ、適法に弁済充当をしなかつた違法があるといわなければならない。そして、本件は、原審の確定したところに従い、直ちに判決をなしうる場合であること前記説示により明らかであるから、原判決中、右の限度を超えて被上告人の請求を認容した部分を破棄し、右破棄部分に関する被上告人の控訴及び上告人のその余の上告を棄却する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 高辻正己)

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